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エトリタ。
荒波に砕かれてできた、奇妙な断崖で知られる街。
この街の子供たちは皆、その断崖を遊び場として育った。
ロータリオもその一人だった。
友人たちとその断崖で遊び、真っ青な海に沈んでいく夕日を見て帰ってくる。
そんな毎日を過ごしていた。
しかしある日。
その断崖の天辺にたたずむ、一人の少女を見つけた。
いや、見つけたのは確か自分ではない、と彼は頭を軽く振った。
確か、一緒に遊んでいたうちの一人、ミシュカであったか。
「あの子、誰だろ?」
怪訝そうな顔で、豆粒ほどに見える少女を指差す。
この町の子供はとても少なく、ここで遊んでいる7人と、ロータリオの妹とその友達4人ですべてであった。
だからほかの街からやってきた子供だとすぐに理解できた。
「ホントだ、ここからだとあんまりよく見えないから上に上がらない?」
友人の一人が言って、満場一致で7人は崖を上へ、上へとあがっていった。
「こんにちは」
声をかけたのはこの7人の中で紅一点のミシュカ。
小首をかしげながらにっこりと笑う。
「こんにちは…」
少女は何処か焦点の合わない瞳で微笑んだ。
ロータリオはその表情を見た瞬間に胸がギュッと締め付けられる思いがした。そして、儚いとはこういうことをさすのだと理解した。
「私はミシュカ。この街に住んでるの。あなたは?」
ミシュカがたずねると、少女は微笑んだまま
「ティン・グルーバー…ミサという街から…引っ越してきたの…」
か細い声が凄く印象的だった。
「ミサって凄い都会でしょ?それなのにどうしてこんな田舎に?大人の都合?」
ミサは、この街の子供皆があこがれる都会。そんな憧れの場所からこんな寂れた街に好んでくるのはおかしいとミシュカやロータリオをはじめ、皆が疑問に思ったのだった。
「病気なの…だから…空気の綺麗な場所に引っ越してきたの…」
微笑んだまま彼女は呟くようにして、海を眺める。
「そうなんだ、早く治るといいね!」
ミシュカがそういうと、彼女…ティンはうんと小さく頷いた。