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大地が受け止め、鳥が歌う。花が踊る。
空から転がるのは小さなカケラ。
Rainy Eyes
やっぱり傘を持ってくればよかった、と長い髪の少女は空を伺う。
教室で
「じゃあね、櫻」
と手を振ってくれた友達はとうに帰ってしまった。
学校からバス停まではなんとか走りきれるだろうが、そこでバスを待っている時間が辛い。
どんなに一生懸命走ったところで、良いタイミングでバスが来ていなければ意味がなくなってしまう。
どうしてバス停に屋根がないのと玄関でため息をこぼしていると、
「入っていくか?バス停までだろ?」
と誰かが話しかけてきた。
まさか自分に話しかけているのでは無いだろうと放っておいたら
「こら、人の話きいてんのか?」
と、顔をのぞき込まれる。
ワックスで固めた黒髪、両耳には小さなピアス。少し垂れ気味の目尻と笑みを含んだ口元。見たことの無い顔だった。
「誰……」
訝しんで思わずつぶやいてしまった言葉に、相手はくつくつと笑う。
「お前、大川先輩の知り合いだろ?」
聞きなれた名前に、櫻の警戒心が少し緩む。
雨は相変わらず降り続く。
「俺は栂谷誠一。転入してきたばっかでも、名前くらいきいたことあんだろ?先輩からきいてねぇかなぁ」
名前をきいて、あぁと思う。栂谷誠一。中学テニス界での注目株だと、そういったことに疎い彼女でも噂に聞いたことがあった。
「栂谷……誠一……」
「おら、栂谷誠一先輩、だろうが」
かみ締めるように名前を呟く彼女に、屈託なく笑う彼の姿は、まるで太陽のようだ。
「で、入るのか、入らねえのか」
傘を軽くあげて示し、少女に問う。
彼女は少し考えた上で、微笑んだ。
「じゃあ、おじゃまします」
それが二人の出会いだった。