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朝から女性陣は張り切っていた。
人ごみを掻き分けるようにして二列に並ぶ。
「マスター、バーゲンって、福袋あるんでしょ?福袋」
「福袋狙いだったら朝早くから並ばなきゃ無理だよ」
「マスター本当になんでも買っていいの?」
「変なものは買っちゃ駄目だよ、ミク。バーゲンは普段買わないもの買ってしまいがちだし。お互い気をつけましょう!」
「リンはゲームがいいな!」
「安かったらね。それよりリン、たくさんお洋服買おう!」
「わーい!かわいいのがいい!」
反対に男性陣は肩身が狭い。
「俺も服……買ってもらえるかなぁ……。」
「そんなの……荷物増えるだけじゃん。どうせ持たされるの、俺らだろ?」
「アイスがあればそれでいいです……」
すん、と鼻を鳴らす兄に、弟はぽんと肩をたたいてやった。
「さぁみんな!戦場へ出陣するよ!」
めがねを装備したマスターが、戦闘開始の合図をかけた。
バババババーゲン(タイトル)
午前十時開店。
去年の末にオープンしたばかりのショッピングモールでは、すでに人だかりができていた。
「迷子にならないように気をつけないとね」
「よし。MEIKOとリンとミクは私と一緒に売り場に行くわよ。KAITOとレンはオープンカフェテリアで待機」
気合を入れなおすように、マスターはまなざしを向ける。
「結局俺ら荷物持ち……」
「後でアイス買ったげるから」
ぶーたれるレンを慰めたのはKAITOだった。男同士で傷をなめあう。
「じゃあ、時間になったらここに戻ってくるから」
それだけ言い残して、女性陣は人だかりの中へと消えていった。
「まるで戦場だね。戦争なんてデータでしかしらないけれど。あぁ、ほら。ひとつのものを二人でとりあいっこして。服が伸びる、悲鳴を上げている!」
カフェテリアの向かいにある婦人服売り場は人と熱気にあふれている。いや、あふれているのはそこだけではないが、今見える範囲がそこしかないのだ。人で。
「去年もこんなんだったの?」
昨年の正月はまだまだ調整中で外に出してもらえなかったレンは、KAITOにたずねた。
「去年はもっと酷かったかな……ここはまだオープンしてなくてね」
もう一件あるデパートに人が集中。予想以上の大混乱。
それを聞いたレンは、うわぁとすごく嫌そうな顔をした。
「荷物の量もすごかったけどね……」
このあとまたあの地獄を味わうのかと思い、KAITOはガックリと肩を落とした。
初売り!セール!割引!off!
の文字が踊り並び、飛び交う服売り場。
必勝法はとりあえず人が手に取る前に自分の手で商品を握り締めてしまうことだ。
「一枚一枚サイズなど吟味するのは後!とりあえず自分がほしいと思うものを握るのよ!」
司令官は指示を飛ばす。
「ほしいものは必ずゲット!」
まるで何かのスローガンかのように叫ぶと、群集に突撃していった。
トップス、パンツ、スカート、帽子、ブーツにコート。
いろんなものが安くてついつい買いすぎてしまう。
「で?つ、い、買いすぎた量がそれ?」
わざわざ強調させて辛らつに言い放ったのはレン。
カフェテリアまで帰ってきた4人が持ってきた荷物は半端ない。これを全部自分たち二人だけに持たせるのだ。男尊女卑、ではない。女尊男卑だ。酷い量の紙袋と靴と帽子の箱。
「まだお店に預けてある分もあるんだけど……」
えへ、とかわいらしく笑ってみせるマスターに、KAITOは苦笑いを浮かべるしかなかった。
去年もこんな感じだった。もうこの人の買い物癖はあきらめるしかないのだ。
「あとで私とMEIKOと一緒に来て頂戴、KAITO。お店に荷物取りに行くから」
名指しで呼ばれてしまえば、もう渋々だろうがなんだろうがついていくしかない。
「はいはい」
半分呆れ顔でも笑って答える。
「じゃあとりあえず、腹ごしらえといきますか!」
一時間半たっぷりと遊んだ女性陣は、さっさと荷物を渡して先に歩き出す。
「マスター、俺の分もゲームかってくれよな!割りにあわねぇよ!」
軽めの紙袋だけを両手に提げて、その後をレンが追っていく。
「ほら、お兄ちゃん。置いていかれちゃうよ?」
長い髪を揺らしてミクが振り返る。
「あぁ、うん。今行くよ」
残った紙袋とたくさんの箱を抱えて、KAITOは軽くため息をついた。