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目の前に突然現れた時計を見事に左手で受け止る。
足場は不安定な船の端。ひとつ間違えば海の藻屑という危険な場所である。
「暴力反対ー」
へらへらと笑う彼にむしゃくしゃし、
「二度とその顔を私の前に見せるんじゃない!」
凄い剣幕で彼女は怒鳴った。
「一度くらいデートしてくれたっていいだろう?俺は君が好きなんだ」
そういってひらりと甲板に舞い降り、彼は彼女の手を握ろうと近づく。
「やめろ。気持ちの悪い」
「ひどいなぁレディ……。せっかくいい知らせを持ってきたって言うのに」
軽くあしらわれ少しすねた調子の彼は、彼女に何かを差し出す。
「なんのつもりだ?これは」
思い切り顔をしかめた彼女の目の前には、かわいらしい封筒に入った手紙が差し出されていた。
「部下に調べさせたんだ」
彼は嬉々として伝える。
彼女は訝しげに首をかしげながらも封を切り中身を開く。
手紙の隅々まで目を通すまでもなく、喉の奥が熱くなって景色がぼやけた。
「生きてる……彼が……」
熱い水滴が鼻を伝い便箋を濡らす。
「恋敵が生きてるのは少々不満だけど、君が悲しむ姿を見るよりはずっと良い」
男は目を閉じて口元を綻ばせる。
全ての風向きが、変わった。