兄はとても優しい。
そんな兄が、ミクは大好きだった。
でもなんで?どうして?
仕事から帰ってきてリビングに入ると、冬の定番であるコタツで、みかんを食べながら兄と妹がお帰りといった。
みかんを剥いているのは兄で、妹はゲームをしていた。
「おかえり、ミク姉ぇ」
「ミク、おかーえり」
なんで兄が手ずから妹にみかんをむいて食べさせてやっているのか。
「ミクが一番早かったねー。マスターとめいちゃんはまだ帰ってきてないんだ」
「お兄ちゃん、白いの残ってた!」
みかんの筋が残っていると言う妹に、笑いながらごめんごめんと謝る兄。
どうしてそんなに優しいの?
「そうなんだ……私……部屋にいるね……」
「?……レンならお風呂に……ミク?」
突然きびすを返したミクに、兄は心配そうに尋ねる。
「ちょっと疲れちゃって」
ミクはそれだけ言うと、自室に飛び込み、扉を閉めた。
そのまましゃがみこんでひざを抱える。
自分が狭量すぎるのだ。
わかっている。
でも、あの妹と兄の様子が頭から離れなかった。
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