忍者ブログ
Saika
| Admin | Write | Comment |
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ONE PIECEリンク
同盟とか
リンクについて
サイト名:彩家 Saika

リンクはこちら⇒http://paraiba39.blog.shinobi.jp/
  
   リンクバナー


リンクフリーです。貼ったり剥がしたり斬ったり焼いたり蒸したりご自由に。
食べるのはお腹壊すとまずいんでやめたほうがいいかと。

バナー画像は
Studio Blue Moon さまより拝借
アクセス解析
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

仙蔵は田舎のとある宿屋に泊まっていた。
朝、窓の障子を開けるとすばらしい緑が広がっていたので
「すみません」
と手をたたいて宿の女中を呼んだ。
女中の名前を秀と言った。
「はい、おはようございます、立花様」
のほんとした笑顔がかわいらしい。
「何かご用でしょうか?」
「えぇ、ここの景色が余りにもすばらしいので。悪いですがこちらにチョウズを廻してくれませんか?」
「は?」
秀は思わず訊ね返してしまった。
「こちらにチョウズを廻してください」
「少しお待ちください。旦那様と相談して参ります」
秀は首を傾げながら仙蔵の部屋を後にした。
「旦那様ぁ」
返事も待たず、秀はスパンと勢いよく障子を開けた。
「いつも返事を待って障子をあけろっつってんだろ」
算盤を弾きながら叱るのはこの宿の主である文次郎である。
「ぅ…ごめんなさい…」
「で、用件はなんだ。速やかに言え」
文次郎は顔を上げることなく算盤を弾き続ける。
「あのぉ…立花様がチョウズを廻してほしいとおっしゃってるんですが…」
「なぜだ!!」
言い終わると同時に飛んでくる罵声にビクつく。
「何か変なこと言いました…?」
秀の瞳は潤んでいる。
「いや、計算が合わねぇんだ。で、何だって?」
「ですから立花様がチョウズを廻してほしいと」
狼狽しながらももう一度伝える秀。
「あぁ、それなら板場の桜の仕事だから伊沙子に聞いてくれ」
秀は文次郎の部屋から追い出された。

「というわけで、お訊ねしたんですけど…」
秀は事の経緯を話した。
「チョウズ…いや…しらないなぁ…」
伊沙子も腕を組み首をひねる。
秀がではそのことを伝えてきますと言うと
「まぁいいや。僕が直接文次郎にきいてくるよ。そっちの方が早いから」
にっこり笑って伊沙子は板場から文次郎の部屋へ移動した。
「何だよ。おまえも知らないのか」
算盤を弾く指を止め、文次郎は腕を組む。
「そうだ!七松寺の和尚に聞きにいったらどうかな?あの和尚、自分は物知りだって自慢してたし」
それはいい案だと文次郎が膝を打ち、伊沙子は七松寺へ使いに走った。

PR

嗚咽を漏らすような声が聞こえて、伊作は部屋の前で立ち止まった。
入るべきか入らざるべきか少し迷った。
親友である仙蔵なら慰めてやりたい。
だが、もしも文次郎だったら。
そう考えて障子の手前で手が止まる。
恋人である文次郎が泣いていたなら、自分はどうするべきなんだろう。
それでも意を決して少しだけ障子を引いた。その隙間からするりと入り込む。
夏の暑い時期に締め切った部屋はやはり蒸し暑かった。
がらんとした部屋の片隅で、彼はうずくまっていた。
目を右手で覆い、ひざを抱えて壁にもたれている。
伊作はゆっくりと近づいて手を伸ばした。
その指が触れる前に体はびくりと震えたが、おそらく伊作が部屋の前で迷っているときから気づいていただろう。
柳眉を寄せたまま口元を緩めると、横に座って優しく彼の頭を撫でた。
いつも被っている頭巾は左手にクシャクシャなって握られている。
あまり手入れされていない髪がちくちくと刺さって少しくすぐったかった。
二人でしばらくそうしていた。
文次郎は膝を抱えたまま、伊作は彼の頭を撫でたまま。
ここに来たころには南に上がっていた太陽も、今では西に傾いていた。
彼は泣いている理由を一切語らなかった。
涙を流してもいなかった。
ただ、泣き終わったあとに一言

「ありがとう」

とだけ言った。
普段が普段だけに、伊作はなんだか変な気分に襲われた。

髪にそっと口付ける。
夜風がふわりと縁側の風鈴を揺らした。

月の出ない朔の日は忍者にとって黄金時間である。
それはある男にとって、とても重要なものであった。

走り出す。
軽く息を弾ませる。
クナイを投げる。
的に当たる。
静かにすべてを遂行する。
すべては強くなるために。


「夜中にたずねてきたかと思えば、無茶をする」
呆れのため息を漏らした。
綺麗な包帯を巻かれていく手は小さな行灯に照らされて橙に光る。
「服は土ぼこりにまみれてるし。はい、できた」
無理しちゃダメだよ、と包帯を巻き終わった手をきゅっと握ってぽんぽんと軽く叩く。
「夜中のトレーニングもいいけど、あんまり無理はしないで」
「おい」
そそくさと立ち上がり救急箱を片付けに部屋へと戻ろうとする伊作の腕を掴み、包帯を巻かれた手が引き止める。
「なんで泣いてるんだ」
月光に照らされて、こぼれた雫がきらりと光った。
「兎に角落ち着け」
何処となく焦ったような声色に、伊作はうんと頷くが込み上げる熱いものはなかなか止まらない。
参ったなぁと言う風にガシガシと頭を掻くと、しゃがみ込んでしまった頭を抱き寄せ軽く撫ぜた。
「どうしたんだ、急に」
「……文次郎が……死んじゃった……」
飛び出した言葉に思わず目を見開く。
「じゃあ今ここにいる俺は何だよ」
できるだけ優しい声色で言い聞かせるように囁く。
「腕に怪我したくらいで死んだりしねぇよ。お前が一番わかってるだろう?」
夢でよかった……と枯れた声が呟く。
「夢でも……庭から誰かが……やってきて……文次郎が……息も絶え絶えで……僕はどうにもできなくて……それで、文次郎は……息を……っ」
泣き止みかけたところで、また泣き出した伊作を、文次郎は強く抱きしめた。
「あー、わかったから。泣くな。な?」
どれだけの時間そうしていたのか。
行灯も風で消え、月明かりだけが青白く二人を照らし出す。
「俺は簡単に死んだりしねえよ、そのために強くなるんだからな」
額と額をくっつけ、ようやく泣き止んだ伊作の頬を転がる涙を指で拭った。
「でも嬉しかったぜ」
「……え?」
「夢であろうが、俺の最後を看取ってくれたのがお前だったなら、俺は本望だからな」
頬に紅葉を散らした伊作の髪をゆっくりと撫ぜる。下ろされた洗い髪はさわり心地が良かった。
その髪にそっと口付ける。
夜風がふわりと縁側の風鈴を揺らした。

踏まれた。
遠くで雷の音が聞こえる。
まだ雨の落ちてこない空を見上げながら、長屋の縁側でごろごろうとうとしていた。
「こぉら、文次郎」
「あんだよ」
見下ろす相手にそっけなく返事をする。
「邪魔なんだけど」
少し頬を膨らませて、顔を覗き込んでくる伊作は両手いっぱいに洗濯物を抱えていた。
「洗濯したんか。雨降るぞ」
「だからあわてて取り込んだんじゃないか」
ひじで頭を支えた状態で縁側を向いた文次郎から足を退けると、しれっとした様子で彼は自室に入っていく。
「君こそ、こんなところで何やってるのさ」
「うるせぇなぁ……昼寝だよ、昼寝」
開け放したままの障子をはさんで話す。
「ここが一番風通しがよくて涼しいからな」
「い組の縁側だって変わりはしないだろう?」
大きくため息を吐くと、乾いた洗濯物をたたみ始めた。
「ここは静かだからな」
い組の縁側、すなわち文次郎の部屋の縁側は、渡り廊下のそばにあるため人通りが多い。
比べて伊作の部屋は端っこにあるため、人はとおらず静かなのである。
「そう」
伊作はため息を吐くかのように返事をするが、その表情は柔らかい。
文次郎は目を瞑り、背後に聞こえる洗濯物をたたむ音を聞く。
その中に雨の音が混じりだした。
「降ってきたね……」
「あぁ……梅雨だからな……」
片目を開けて庭を眺める。地面と紫陽花の葉が雨に打たれてバチバチと音を奏でていた。
「雨は嫌いだけど、雨の音は好きだな」
「矛盾してないか?」
思わず聞き返す。
「そうかな……?」
首をかしげる気配がわかり、文次郎の口元は自然と緩んだ。
「はい、文次郎。君の分もついでに洗濯しておいたからここにおいておくよ」
「悪いな、いつも」
体を起こし、振り返る。礼を言うときは相手の方向を見るのが礼儀である。伊作はさっさと自分の分を箪笥に片付けていた。
「悪いと思うなら溜め込む前に自分でやってほしいんだけどね」
「色々都合があるんだよ」
肩を上げる伊作に、文次郎は立ち上がって照れくさそうに頭を掻く。
「なんだよそれ」
むぅと膨れてみせる伊作に、文次郎は別に、と視線を逸らした。
「雨……か……」
伊作は文次郎の傍にひざを抱えて外を見る。
「雨だな……俺は嫌いじゃないがな」
そんな彼に習い、文次郎も胡坐を掻く。
「そうなんだ」
「雨が降らなきゃ米も野菜もできないからな」
現実的でもっともな答えを聞き、伊作は笑いを漏らした。
「確かにそうだね……でも、僕はやっぱり音が好きかな」
優しい目で外を見つめる彼に、文次郎は相手を見て、何故、と問うた。
「だって、沢山の人に拍手されてるみたいで嬉しいじゃないか」
「俺がいるだけじゃ嬉しくないか?」
きょとんとした表情で相手を見つめ返し微笑むと、返事の代わりにそっと口付けを交わした。
趣きある黒電話がリーンと澄んだ音をたてる。
「おはよう、ソレイユ君」
「おはようございます。今日か明日は絶対に雨ですね。」
片手間に取った受話器口で少女が何度か頷いた。山積みになった紙の束から適当に一枚引き抜くと、走り書きをしながら会話を交わす。
「どうして?」
「オーナーがこんなに早く起きてこられるなんて、天変地異の前触れに決まっています」
相手を気遣うようにゆっくりと受話器を下ろすと、やだなぁ、と小声で文句を言いながら自分の店を後にした。
「酷いな……。私だってたまにはするよ?早起きくらい」
「早起きなのは結構ですが、襦袢で店に出てくるのいい加減やめてもらえませんか」
「まだ開店前だからいいじゃない」
「いいわけないです。早く着替えてきてください」
近所なのにどうして電話がないのと思いながら走る。着物のすそが邪魔だ。下駄はカラカラ鳴り続ける。
まだ準備中の札のかかった喫茶店の前で、少女は大きくため息をこぼしてからからゆっくりと扉を開けた。ついている鈴がカランと鳴る。
「すみませーん、まだ開店前なんですけど」
笑いを含んだ声は、棚に並べられた西洋骨董の向こう側から聞こえた。
少女はおや、と思う。
仮面の顔は降参のポーズをとり、カウンター越しにスプーンを突きつけられながらも微笑んで、入ってきた彼女をみやる。
「あ、お客さんじゃないね」
「どうしたんですか、一芳さん」
「ソレイユさんったら、名前で呼んでねっていったのに。オーナーにお電話」
走り書きのメモを、本人ではなくカウンターの向こう側ですいません、と笑う顔に渡す。
「私たちはあなたのところの電話番じゃないのよ?」
腕組みをしてぷりぷりと怒りながらもカウンター席に座った。
「そうだねぇ、電話の導入も検討してみよう」
まるで誰かに相談するような口ぶりで、オーナーは席を立つ。
「どこにいくの?」
と小首をかしげてたずねる彼女に、彼は一言着替え、とだけ残して、奥へ消えた。
「あの人、今日はえらく早起きなのね」
苦笑交じりに頷く。
「明日はやっぱり雨ですね」
「雪かもよ?」
小声で話しながら、二人はくすくすと笑いあった。
「そういえばお仕事いいんですか?」
朝一番のお客にスマイルを向けながらソレイユはたずねる。
「あまりよろしくない。志桜里が怒ってると思う……」
「いつもすみません」
「いいのよ、ソレイユさんが気にすることはないと思うわ。問題は……」
一旦言葉を切って、志都花は店の奥を目線で示した。
「しかし…」
彼女の言いたいことを、理解したうえで、それをやんわりと否定する。
「主の問題は僕の問題でもありますから」
意に染まないですけどね。と付け足して、再び笑う。
「いいの? そんなこと言っちゃって」
と、志都花が言ったところへ、オーナーがやってきた。
整えた黒髪にかんざしを挿し、派手な赤い着物を肩から提げた様は、まるで遊郭を渡り歩く遊び人のよう。
四尺七寸を越す身長に、すらりとした身体。整った顔には少し不釣合いな仮面をしているが、それも気にならぬほどの美青年だ。
「さぁ、いこうか。志都花」
手を彼女の腰に回してにっこりと笑う彼に、
「なんでそんなにえらそうなのよ」
と、くしゃりと顔をゆがめて笑い、軽く彼の胸を小突く。
「いってらっしゃいませ」
ソレイユが二人に向かって頭を下げた。
「し~づ~か~」
店では志都花と同じ顔が怒りをあらわにして待っていた。
「志桜里ちゃん、ごめんね」
「ごめんねじゃないですよっ」
腕組みして怒る仕草に既視感を覚える。先ほど喫茶店で志都花が怒っていたときも同じポーズをとっていたのだと思い出す。
「やっぱり双子なんだねえ」
とうとつにしみじみと味わうようにいったその言葉に、二人は小首をかしげた。
「ちょっと、オーナー。変なもの食べたの?」
「朝は早いし。変なこと言い出すし」
同調で問い詰められ彼は、はははと笑うしかなかった。
「というわけで電話かりるね」
それだけいうと、相手の返事も待たずに、受話器を取り上げた。
かける相手は決まっていた。
「おはようございます。先ほど電話いただいたクロカミと申します。ご依頼はなんでしょうか?」






双子は書いててとても楽しい。
漫画になることをイメージして書いていたので、最初のあたりは
セリフ⇒DIEU NOIR(オーナーのお店)
ナレーション⇒蘇芳書房(双子のお店)
のイメージ。
≪ Back   Next ≫

[7] [8] [9] [10] [11] [12] [13]

Copyright c 彩家。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Template by カキゴオリ☆ / Material By はながら屋
忍者ブログ [PR]