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空気が澄み、くっきりと星空の見える冬の夜。流石にこの時間まで電燈をつけているビルはなく、近隣のビルの灯もほとんど消えうせ、星と月に照らされた闇の世界が押し寄せてくる。
だだっ広い人気のない公園にぼんやりとした街燈の明かりを受けて浮かびあがるシルエット。その姿には、どこか見覚えがあった。
長い足を組み、ベンチにどっかりと腰を落ち着けて紫煙をくゆらす。
昼の姿からは想像もつかないその姿は、なんだか不思議の国にでも落ちたかのような気分になる。
「優等生の名が泣くな……」
コツコツと足音を立てて街燈の下にやってきたのは、同級生で親友で悪友。背の高い彼の影を、街燈が一層長く映し出す。
「お前も人のことは言えないだろう?どうせ一日に一箱も吸わんのだ。目を瞑れ」
そういって、ベンチに腰掛けていた男は手馴れた感じで携帯灰皿に煙草を捩じ伏せた。
そして
「お前もどうだ?」
と、薄い緑の装飾が美しい、LUCIAの箱を差し出す。中身はまだ半分ほど残っていた。
「いや、自分のがあるから良いよ」
自分の穿いていたジーンズのポケットから赤いパッケージが印象に強いMarlboroを取り出してみせた。
「ただ…ちょっと慌てててね」
浮かべた笑みに陰りを見せた彼に男は首をかしげて疑問を伝える。
「火、貸してもらえない?」
悪戯っ子の様なその笑みに、男は仕方ないなといいながらも持っていたライターを投げ寄越した。
男が二人、真夜中の誰もいない公園でぼうっとしている。
他人が見たらとても滑稽だろうと男の隣に腰を下ろし、紫煙をくゆらせながら彼は思う。
しかし、この無言の空気が、自分たち二人にとって一番心地のいいものであることは確かだったのであえて何も言わなかった。